巨星墜つ〜立花隆さんの死を悼む

膀胱ガンを始めさまざまな病を抱えておられ、ここしばらく動向をお聞きすることもなかった立花隆さんが、すでに4月に亡くなられておられたとの報道がありました。私自身、10代の頃から氏に私淑し数々の著書を愛読しながらも、とうとう謦咳に接することもなく逝ってしまわれました。コロナ禍で迷いさまよえる日本の未来をどのように考えておられたか、頼れる知の巨人を喪った私たちのこれからが一段と心細い思いがします。

 「田中角栄研究全記録」を始め、「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」など耳目を集め世を揺り動かした著書が数え切れないほどある中、私にとって大切な一冊は「思考の技術(新題「エコロジー的思考のすすめ」)」です。原題で上梓されたのはちょうど半世紀前、私自身は幼子であった1971年で、その頃の氏の着想・構想が、その後平成を経て令和に至る今日まで、全く色あせず示唆に富んだ内容であることに改めて驚き入るばかりです。ようやく世界は温暖化・海洋汚染など環境危機に対し、SDGsで行動変容をしようと動き始めています。チェルノブイリ・福島での大惨事さえ経験したこの半世紀だったのに、その間人類はあまり学んでこなかったのだなあという感想を抱いてしまいます。

 徹底した取材・調査による事実解明へと氏を突き動かしたものはおそらく、物ごとの真実・本質を知りたいのだという純粋な知的好奇心・探究心だったのでしょう。私を始め、たいていの人間は地道で丹念な作業が面倒なので、憶測により「このことは、大体そういうことにしておこう」と横着を決め込んでしまいます。それが積もり積もって、おかしな現状を作り上げてしまいます。いつか、あの世で立花さんにお目にかかった時に恥ずかしくないよう、遅まきながら、面倒なことでも丁寧にやっていく自分になろうと小さく決意すると同時に、立花さんに続く知的チャレンジャーをこの教室から巣立たせたいと大きな望みを膨らませています。

 猫ビルを建てるほど猫をこよなく愛した立花さん。ご冥福をこころよりお祈り申し上げます。合掌。

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