憲法が保障する「教育を受ける権利(第26条)」と「9月入学・進級」
前回のブログで提言した「9月入学・進級」ですが、早くも衆議院予算委員会で総理大臣や文部大臣の答弁がされるなど、急速な進展を見せています。明治以来の長きにわたって社会慣行とされてきた「4月入学・進級」を変えようというのですから、このテーマを今まで全く考えたこともない人々には当然ながら、こういう議論が起こったこと自体、まさに驚天動地の出来事でしょう。早速、さまざまなデメリットが挙げられています。「拙速だ」「桜のない時期の入学式では情緒が失われる」「就職に不都合」「実業界に影響がある」「国家試験の時期と合わない」「会計年度と合わない」…etc。
しかし、なぜ今この議論が起きているのか、その本質を考えなくてはなりません。もっとも重要な理由は、日本国憲法で保障されている「教育を受ける権利」が現在進行形で侵害されているからなのです。憲法は、第26条第1項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と定めます。さらに、同第2項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と保護者の義務をも定めます。とすれば、すでに5月末まで3ヶ月に渡り義務教育の現場が閉ざされることになっている現状では、こどもの有する権利も親の義務履行の機会も奪われているに等しいといえます。そうであるなら、憲法上の要請ではない上記「デメリット」の回避は、人々の心情面ではともかく、国政においては劣後する事柄とするべきです。最優先は、教育を受ける権利を守ること。それに尽きると思います。オンライン授業の整備が急務だ、という意見も多いですが、すでにそれを実施している私学と、これから手探りで始める(かもしれない)公立学校とでは、たとえば、同時に大学入試共通試験に臨むという時間的な面でも全く「ひとしく」ありません。また、それにかかる費用は少なくとも義務教育段階では「無償」でなければならず、数週間単位での実現可能性は著しく低いと言わざるを得ません。
もし、次の学年度末が2021年3月31日ではなく同年8月31日へ繰り下がるとすれば、修学旅行や運動会や遠足など、学校生活を綾取る行事も実施できるかもしれませんね。学校という場は、やはり他の何ものでも代替できない場なのです。