我が道をゆく人を見送る

 18歳の藤井聡太王位・棋聖が、まもなく卒業するはずだった名古屋大教育学部付属高校を、去る1月末で自主退学していたそうです。その理由はもちろん、将棋に専念したいということです。常識的には、高校中退は中卒と同様に扱われ実社会で生きていくのに不利なこととされます。自分が進むべきと信じる道と異なる道なので、外れても構わない、という藤井二冠の強い意志の現れでしょう。もったいない、そんなこと平凡な人間には真似できないよ、真似するべきではないよ、と思われる方も多くいるはずです。
 我が道とは、どういうものを言うのでしょう。決して、誰かが作った道に残る足跡を無難にたどっていくことだけではないでしょう。他人と違うことを嫌う日本社会では、「我が道をゆく」人は、ときに「自分勝手な」人ともされます。ですが、これほど価値観や常識が激しく変わる時代に突入し、何が良くて何が悪いのかもわかりにくくなっています。そうであれば、他人や地球環境に悪影響を及ぼさないようなことであれば、その道をゆこうとする人を温かく見送っても良いのではないでしょうか。多数派が自分たちとは異質な行動を咎めるような風潮は、多様性を損ない、その集団の将来性を減じます。
 3月、誰もが新しい分岐点に立ちます。私たちの教室でも同じです。去りゆく人ともお互いの幸せを祈り合いながら、別れと次に来る出会いをかみしめたいと思います。

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