【桜にも必要だった冷気】
寒い日暖かい日が目まぐるしく入れ替わったこの春は、例年になくずいぶん長く桜を楽しめた春でした。一説によると、桜の蕾にとって必要な冷気が1月、2月の暖かさのせいで足らず、逆に3月の低温で桜の開花のリズムが狂ったということのようです。寒い時はじっと寒さに耐えるというきちんとしたライフサイクルを経なければ、物言わぬ桜と言えど不調に悩むといったところでしょうか。そういえば、温かい室内で冬を過ごした蝶の蛹は、羽化できずに死んでしまうとも聞きます。ぬくぬくと暖かければ良いというものではなく、成長のためにあえて必要な冷気というものがあるのでしょう。
子どもの成長も同じです。試練があり、その試練を自ら意識し、自らの意思で超克していかねばならない。そうすることで大きく美しく成長していけるのです。受験というものは、一般に子どもが出会う最大の試練と言えると思います。その意味で、受験をただひたすら回避する、という姿勢には私は懐疑的です。
ただ、その試練を自ら意識し、自らの意思で乗り越えていけるのか、その子の発達具合や環境の差異によって、いつ受験にチャレンジするべきかのタイミングは一人ひとり異なると思います。そうはいっても、日本の学制下ではその時期を12歳、15歳、18歳の3度の機会から、1ないし2度選ぶことになります。
ということは、準備期を含めると7、8年間という長期に渡って試練に耐えることになるわけですから、桜や蝶とは比べものにならないくらい、長期的展望に立って臨むことが必要です。決して、周りの空気に乗せられただけで安易に受験生活を始めてしまってはならないと思います。時機を間違えたら、育つものも育たない。人間も生き物である以上、時機を得て行動したり自重したりすることが肝要だと思います。