失敗と願望と軌道修正

 パンデミック只中で揺れる東京オリ・パラ大会。国・東京都・IOCなどの間で具体策の有意義な話し合いを欠いたまま時だけが流れ、G7首脳の支持も取り付け、中止判断の時間切れで開幕を迎える、というシナリオが垣間見えてきました。誰しもが感じるように、太平洋戦争末期の戦争継続には、軍部や政権にこれと似た雰囲気があって、やめるにやめられなかったのではないでしょうか。選手たちの努力によって得られる感動を、大会後の感染拡大の隠れ蓑にさせるわけにはいかないのです。

論語の言葉ですが、「過ちてはすなはち改むるに憚る無かれ(失敗したときはためらわずすぐ悔い改めよ)」とあります。そもそも、人は誰でも失敗を失敗だと認めたくないし、あえて認めたとしても修正するなんてさらに難しいです。失敗なんて、自分では忘れたいし、他人にも忘れてもらいたい、と願うのは当たり前の人情です。でも、願望だけで世の中は成り立ちません。より合理的な行動を取らなければ、同じ失敗を繰り返してしまいます。勇気を持って軌道修正して同じ失敗を未然に防ぐ。そういう知恵を人類は蓄積してきたはずです。

 今回のパンデミックは、世界中の未来の教科書に必ず載ります。それで学ぶ未来の子供達が、「パンデミック収束に手間取った当時の人たちは、判断力が弱かったんだね」と言われたくはありません。ボランティアを始めとする大会関係者へ最優先・大至急でワクチン接種する。無観客試合を実現できなければ、次善の策として、首都圏の観客に限ることで人流によるリスクを下げる。各国からの大会役員・報道関係者など全員に複数回のPCR検査をする。他にもアイデアはあるはずです。「安全・安心」を願うだけではなく、願望第一から軌道修正して打てる手を果敢に打ち、「失敗五輪」の汚名を着せられないよう、トップの決断と行動を求めます。

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