赤ちゃんがみるみる減っていく国

 昨年2020年の1年間に全国の自治体が受理した「妊娠届」は合わせて87万2227件で、前年2019年から4万4363件、率にして4.8%減少したことが厚生労働省の調べで分かりました。年間の件数としては過去最少と見られ、同省は「初めて緊急事態宣言が出た時期の前後に妊娠する人が大きく減少したと見られる」としています。月別の減少幅は、5月が最も大きく17.6%、次いで7月が10.8%、10月が6.6%でした。妊娠届は妊娠から2か月ほどで届け出る人が多く、厚生労働省は「去年初めて緊急事態宣言が出た時期の前後に妊娠する人が大きく減少しているため、新型コロナウイルスの感染拡大の影響と見られる」としたうえで、「その後の減少率は例年と同じ程度で大きな減少は見られなかった」としています。いったい、日本の赤ちゃんは、この先どのぐらい減っていくのでしょうか。

 2019年の人口動態統計月報年計によると出生数は前年(2018年)より5万3,166人少ない86万5,234人でしたから、妊娠届は上記数値から計算すると91万6590件受理したとみられ、妊娠届後の流産などの不幸な出来事が5.6%程度起こったと考えられます。また、この2019年の合計特殊出生数は、前年比0.06ポイント低下して1.36でした。仮に、昨年妊娠届のあった胎児が同じ割合で誕生し、うち半数が女児だと考えると、その数は41万1691人となり、その全員が20年後に無事に二十歳を迎え、合計特殊出生数が1.36のまま維持されるとすると、コロナ禍の日本で誕生した女性から将来生まれる赤ちゃんは、55万9900人となります。

数字ばかりの話になりましたが、要するに今のコロナ禍でもっとの憂慮すべきは、東京オリ・パラでもなくワクチン接種率でもなく、残念ながら20年後の国のカタチがすっかり変わってしまうことではないかと思います。言い換えれば、今の若い女性たちの多くが「今の日本では子どもなんて持てないよ」と絶望しているかもしれないことです。赤ちゃんこそ、国の未来を作る担い手。その存在がみるみるうちに減っていく。この異常事態を放置し、看過しているのが日本の現状なのでしょう。ワクチンの優先順は、出産適齢期にある女性へ。助成金を支払うなら、まず困窮する女性たちへ。そういったプライオリティをつけられない政治家・官僚・首長に国の舵取りを任せておいたら、今の子ども達が中高年世代になる40年〜50年後のこの国は「限界集落」ならぬ「限界国家」になってしまっているかもしれません。

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